
結婚前は、3人の女性と同時に付き合うこともあった。
別に自慢じゃない、ただそういう時期があったというだけの話だ。広告代理店という仕事柄か飲み会も多いし、クリエイターや芸能関係の女性と知り合う機会も多い。俺は器用な方だから、それぞれとの関係を破綻させずに維持することくらいはできた。スケジュール管理も得意だし、嘘をつくことも上手い。
でも、結婚してからはそれをやめた。
理由は単純でダサいから。奥さんを泣かして…とかそういう昔の価値観は俺には馴染まない。それに今の時代はリスクが大きすぎる。俺はSNSもそれなりにフォロワーがいるし業界内での繋がりも多い。誰がどこで見ているか分からない時代に、不倫なんて割に合わない。そこまでするほど、俺はアホじゃない。
メンエスという合理的な選択
そこでたどり着いたのが、メンズエステだった。
最初は正直抵抗があった。お金を払って女性と関わるなんて邪道だと思っていたし、どこか負けた気もしていた。でも、元々友人が何店舗かメンエスを経営していて、その業界の実態もある程度理解していた。彼から「一回来てみろよ、お前みたいなタイプは絶対ハマるから」と言われて、まあ試しにと思って行ってみたのが始まりだ。
行ってみて分かったのは、「接客を受けているだけ」だということ。法的には浮気でもなんでもないただのサービスだ。店側も客側も、そのルールを理解した上で成立している関係。何よりタイパがいい。彼女を作るなら、口説いて、関係を築いてデートを重ねて……そんな時間も労力も必要ない。予約して、行って、施術を受けて、お金を払って帰る。それだけで満たされる。
俺にとって、これが今最も合理的な選択だ。
芸能関係の女性が集まる店
俺が通っている店は、少し特殊だ。
セラピストの多くが芸能関係の仕事をしている。モデル、女優の卵、インフルエンサー。彼女たちは副業としてメンエスをやっているか、あるいは業界とのコネクションを作るためにこの仕事を選んでいる。客層も独特で、芸能関係者やIT企業の経営者、そして俺のような広告代理店の人間も多い。
だから会話の質が違う。ただの世間話じゃなく業界の裏話、最近のトレンド、SNSでバズっている理由、Z世代の価値観……そういう話が自然と出てくる。俺は仕事柄若い女性の流行に敏感でいる必要がある。クライアントに提案する企画もターゲット層の感覚を掴んでいないと通らない。だからこそ彼女たちとの会話は単なる癒しじゃなく、情報収集の場でもあるのだ。
「最近TikTokでこういうのが流行ってるんですよ」「インスタのストーリーズ、このアプリで加工してます」——そんな話を月に何度も聞ける。これを広告代理店のリサーチ会社に頼んだら、数十万円かかる。でも、メンエスなら1回3円程度で済む。タイパもコスパも圧倒的に良い。
浮気とメンエスの決定的な違い
浮気は感情が絡む。
相手を好きになり相手も自分を好きになる。その関係を維持するために時間と労力を使う。LINEの返信を考え、デートの予定を調整し、バレないように嘘をつき続ける。そして、いつか必ず破綻する。
でもメンエスは違う。なぜならあくまでもサービスだから。女性も仕事だし俺もサービスとして受けている。あくまでも客と店員の関係だ。もちろん店外で会うこともあるが、それも「ビジネスの延長」として成立している。彼女たちは俺に何も求めないし、俺も彼女たちに何も求めない。ただ、その時間を楽しむだけだ。
これは浮気じゃない。俺はそう思っている。
妻に隠し事をしているという罪悪感はゼロではないが、少なくとも他の女性と恋愛しているわけではない。感情のコントロールができている以上、これは許容範囲だと思っている。
タイパ重視時代の最適解
俺たちの世代は、タイパを重視する。
時間は有限で、無駄なことに使いたくない。浮気をするなら相手を口説くために何時間も使わなければならない。デートにも時間がかかる。LINEのやり取りにも時間がかかる。そして、バレた時の代償が大きすぎる。
メンエスなら、予約・移動・施術すべて合わせても2時間で終わる。感情の負担もゼロ。リスクも最小限。それでいて、満足度は高い。
これが、俺にとっての最適解だ。
結婚前は3人の女性と同時に付き合っていた。でも今は、メンエスで十分だ。器用に立ち回る必要もないし、嘘をつき続ける必要もない。ただ予約して行くだけ。
それが、俺の選んだ「浮気じゃない関係」の形だ。
でも妻には言わない
もちろん、妻には言っていない。
「メンエス行ってるよ」なんて言えば、間違いなく喧嘩になる。いや、喧嘩で済めばいい方で最悪離婚を切り出されるかもしれない。
でも俺は悪いことをしているとは思っていない。浮気をしているわけでもないし、誰かを傷つけているわけでもない。ただ、施術を受けて、会話をして、癒されているだけだ。
SNS時代のリスク管理、タイパ重視の価値観、そして感情をコントロールする能力。この3つが揃っている人間だけが、この選択を正当化できるんだと思う。
俺は、その一人だ。
